磁石は何でできている?素材や作り方をわかりやすく解説
2025.10.03
磁石は、私たちの身の回りのさまざまな製品や機器に使用されており、その性能は素材によって大きく左右されます。
本コラムでは、代表的な磁石の原料や素材の特性、用途に応じた選び方について、基本的なポイントをわかりやすく解説します。
各磁石の主要原料
ネオジム磁石

- ネオジム(Nd)
- 鉄(Fe)
- ホウ素(B)
フェライト磁石

- 酸化鉄(Fe₂O₃)
- ストロンチウム(Sr)またはバリウム(Ba)
サマリウムコバルト磁石

- サマリウム(Sm)
- コバルト(Co)
- 銅(Cu)
アルニコ磁石

- 鉄(Fe)
- アルミニウム(Al)
- ニッケル(Ni)
- コバルト(Co)
磁石の素材として適している条件とは
磁石性能に関する条件
① 残留磁束密度が大きい:磁力線を多く通すことが出来る
② 保磁力が大きい:磁力の元となるエネルギーをたくさん蓄えている、磁力が抜けにくく、外部からの影響で減磁しにくいこと。
③ 最大エネルギー積(BHmax)が大きい:①かつ②を兼ね備えた磁石。磁力が強く、性能が高いこと。
耐久性・安定性
- キュリー温度が高い:高温に強く、温度変化で磁力が落ちにくいこと。
- 経時変化が小さい:長期間使っても性能が落ちにくいこと。
- 機械的強度が高い:割れや欠けなど物理的ダメージに強いこと。
- 錆びにくいか、コーティングで保護できる:耐食性に優れることで長持ちする。
コストや供給面
- コストパフォーマンスが良い:強磁性と安価さのバランスが取れていること。
- 原料供給が安定していること:資源が豊富または安定して入手できること。
用途に合わせた磁石の素材の選び方
磁石の材質の違いにより、耐久性・耐食性・磁力の強さなどにそれぞれ特有の性質を持っています。
下図では、代表的な磁石の種類ごとの特性を比較しています。使用環境や目的に応じて、適切な磁石を選定することが、製品の性能維持や信頼性の確保において重要な要素となります。
| | フェライト磁石 | アルニコ磁石 | サマコバ磁石 | ネオジム磁石 |
| 長所 | 安価 錆びない 大量生産向け 最も使用されている磁石 |
高温耐性『大』 温度による磁気変化が最も小さい |
強磁力(ネオジムに次ぐ) 耐食性 温度変化が小さい |
磁力、最強 |
| 短所 | 磁力が弱い 欠け易い 低温で磁力消失 |
磁力が簡単に減る 長い棒状に作る必要がある |
欠け易い 原材料が高い |
錆びやすい 温度変化に弱い |
| 使用温度 (通常目安) |
-40℃以上かつ250℃以下 | 550℃以下 | 300℃以下 | 80℃以下 |

※1.標準材にて不可逆熱減磁が発生しない温度(温度を下げれば元の磁力に戻る限界温度) ※2.表面処理(メッキ等)前。ただし、表面処理の劣化により錆や腐食は進行します。
まとめ
磁石は、使用される素材によって性能や適用範囲が大きく異なります。ネオジム磁石・フェライト磁石・サマリウムコバルト磁石・アルニコ磁石といった各種磁石は、それぞれ異なる原料を基に製造されており、磁力の強さ、耐熱性、耐食性などに特徴があります。
磁石の素材として適している条件は、磁気特性だけでなく、環境耐性や加工性など多岐にわたります。これらの要素を総合的に判断することで、用途に最適な磁石を選定することが可能になります。
本コラムでは、代表的な磁石の原料とその特性、素材選定のポイントについて解説しました。磁石の性能を最大限に引き出すためには、素材の理解と適切な選定が不可欠です。製品開発や設計の際には、ぜひ参考にしてください。

