サマリウムコバルト磁石の特性をわかりやすく解説

磁石といえば「ネオジム磁石」が有名ですが、実はそれに次ぐ強力な磁石として「サマリウムコバルト磁石」があります。

本記事では、高温環境でも優れた性能を発揮する「サマリウムコバルト磁石」について解説します。

磁石の基礎知識がない方にも理解いただけるよう、その特徴や用途、メリット・デメリットをわかりやすくまとめました。

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サマリウムコバルト磁石とは?

サマリウムコバルト磁石は、1970年代にネオジム磁石よりも前に実用化された強力な希土類磁石です。

サマリウム(Sm)とコバルト(Co)を主成分とする高性能な永久磁石で、特に高温下でも磁力を維持できる耐熱性や、腐食環境に強い耐食性を兼ね備えており、特にネオジム磁石では対応が難しい高温環境で重宝されています。

主な原料

サマリウムコバルト磁石の主な原料は下記のとおりです。

  • サマリウム(Sm)
  • コバルト(Co)
  • 銅(Cu)

どのように作られるのか

サマリウムコバルト磁石の製造工程をフロー図にしたものがこちらです。

サマリウムコバルト磁石製造工程図

サマリウムコバルト磁石の特性

下記はサマリウムコバルト磁石の特性です。

  • 高温への耐性:一般的な材料・形状で考えた時、350℃
  • 磁気特性 (マグナ一般材)
特性 数値範囲 (SGS 単位)
残留磁束密度(Br) 950-1030 mT (9.5-10.3 kG )
保磁力(Hcb) ≧692 kA/m (≧8.7 kOe )
保磁力(Hcj) ≧1433 kA/m (≧18 kOe)
最大エネルギー積(BHmax) 175-199kJ/m³(22-25 MGOe )
  • 環境耐性
  • 物理的特性
    密度:8.4 g/cm³
    抵抗率:0.8×10⁻⁴ Ω·cm
    熱膨張係数:12.5 µm/(m·K)

サマリウムコバルト磁石はどんな用途に使われているか

優れた耐熱性・耐食性を持つサマリウムコバルト磁石は、過酷な環境下でも安定した性能を発揮することから、さまざまな機器に採用されています。

特に高温や腐食環境に強い特性を持つことから、以下のような用途で広く使用されています。

  • センサー部分
  • 医療機器
  • モーター・発電機
  • 電子レンジのマグネトロン
  • 音響機器
  • 計測機器・メーター
  • マグネットカップリングなどの特殊用途

サマリウムコバルト磁石と他の磁石との比較

サマリウムコバルト磁石と、その他の磁石の特徴を表にまとめました。

特性/磁石の種類 サマリウムコバルト磁石 ネオジム磁石 フェライト磁石 アルニコ磁石
主成分 サマリウム・コバルト ネオジム・鉄・ホウ素 酸化鉄 鉄・アルミ・コバルト他
磁力(強さ) ★★★★☆ ★★★★★ ★★☆☆☆ ★★★☆☆
耐熱性 ★★★★★(非常に強い) ★★☆☆☆(弱い) ★★★☆☆(普通) ★★★★☆(強い)
耐食性 ★★★★☆(強い) ★★☆☆☆(弱い) ★★★★☆(強い) ★★★☆☆(普通)
価格 高価 比較的安価 安価 中程度
機械的強度 脆い やや脆い 丈夫 丈夫
主な用途 センサー
医療機器
モーター
マグネトロン
スマートフォン
HDD
精密機器
ロボット
スピーカー
マグネットシート
日用品
計器
メーター
センサー
特徴 高温・高信頼性用途向き 世界最強磁石
小型高出力
汎用性
安価
形状自由
高温安定性と強度

サマリウムコバルト磁石のメリット・デメリット

サマリウムコバルト磁石には以下のようなメリットとデメリットがあります。

サマリウムコバルト磁石のメリット

  • 高温に強く、250~350℃でも磁力を維持できる
  • 耐食性が高く、湿度や腐食環境でも劣化しにくい
  • 磁気特性のバラつきが小さく、信頼性が高い

サマリウムコバルト磁石のデメリット

  • ネオジム磁石より磁力がやや弱い
  • 脆くて割れやすい
  • 原材料が高価で、コストが高い

まとめ

サマリウムコバルト磁石は、高温環境でも磁力を維持できる優れた耐熱性と耐食性を備えた高性能な磁石です。

医療機器やセンサー、モーター、マグネトロンなど、高い信頼性が求められる分野で広く活用されています。磁力はネオジム磁石に次いで強力でありながら、250~350℃の高温下でも安定した性能を発揮する点が大きな特長です。

また、磁気特性のバラつきが少なく、精密機器にも適しています。ただし、材料が高価であることや、脆く割れやすい点には注意が必要です。コストはかかりますが、その分、過酷な条件下でも長く安定して使える信頼性の高い磁石と言えるでしょう。

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